top of page

​高エネルギー二次電池に対するORLIB社のアプローチは充放電反応を担う電極活物質の検討から始まりました。そして(1)4電子反応するSiと、(2)3電子反応の有機チオアミン化合物が二次電池の電極活物質として利用できる技術を開発し、これらを用いた高エネルギー二次電池の可能性を見出しました。

​査読論文

Y. Wang, M. Satoh, M. Arao, M. Matsumoto, H. Imai, and H. Nishihara, "High-energy, Long-cycle-life Secondary Battery with Electrochemically Pre-doped Silicon Anode", Scientific Reports, 10, 3208 (2020).

https://doi.org/10.1038/s41598-020-59913-4 (Open access)

負極技術

シリコン(Si)は高容量の負極材料として古くから注目されています。1原子で4電子以上の反応が可能とされるため、容量密度は4000 Ah/kg近くにもなります。しかしながら、実際に負極に使おうとすると不可逆容量が大きく、充放電反応に伴う体積変化も大きいこと。さらに、正極に比べて容量密度があまりにも大きいため、電極間のバランスが悪くなるといった理由から、利用はほとんど進んでいませんでした。

​ ORLIBはSi電極の不可逆容量と、充放電に伴う体積変化を緩和する技術として、加圧電解プレドープ技術を開発しました。

正極技術

上の図で、硫黄(S)は一つの原子(分子量32)で二つのLiと反応できるため、1800 Ah/kg近い容量密度が期待できます。実際にSを含む電極を作製して充放電を行ってみると、1200~1500 Ah/kgの容量を観測することができます。しかし、2サイクル目以降は容量が低下し、数十サイクルでほとんどゼロになってしまいます。これはLiと結合したSが充電過程でーS -になるとき、一部が電解液の中に溶出し、これを繰り返すこと容量が失われたためと考えられます。

 この問題を解決するために、世界中で様々な方法、例えば、Sをポリマーの側鎖につけて溶け出さなくする方法、ミクロのケージの中に閉じ込める方法、あるいは電解質を固体にして溶け出さなくする方法などが検討されています。

 ORLIB社は多電子反応する有機チオアミン系化合物をオリゴマーとすることにより、容量密度と反応性、充放電サイクル寿命を両立させることに成功しました。ORLIB社の正極材料は単位分子構造(分子量約120)あたり、3電子反応し、理論容量密度は700 Ah/kgに達します。この化合物はこれまでに二次電池の活物質として検討されていないため、基本的な分子構造を請求項とする特許を出願中です。

bottom of page